赤いバラと、愛すべき

赤いバラ。

まるで一花弁、一花弁が繊細な絹のように、見事に織り重なって生まれた奇跡のバランス。

いつだって自然の産み落とすものは、どこか、グロテスクで、エロッティクで、チャーミング。

本日お越し下さったお客様よりのプレゼント。

本当にありがとうございます。その命朽ち果てるまで愛そうと思います。ドライフラワーの誘惑に打ち勝って。

初めて赤いバラというものをいただいた気がします。それを抱えて電車で揺られてきたことを思うと微笑まずにはいられません。

こういう言い方は少し失礼かもしれませんが、ボクは決して多くのお客様を抱えさせっていただいているわけではありません。しかしながら、本当にすべてのお客様が濃密に素晴らしい方々ばかりなのです。ちょっとこのような恵まれた美容人生を歩めている美容師さんは、なかなかいないんではないでしょうか?

本当に皆様ありがとうございます。本当に美味しいものを食べた時と同じぐらい、生きてて良かったなと思わされずにはいられないのです。たとえは下手ですがまさにその心地。

そして、赤いバラのお客様と話したことについて。

koko Mäntyの初めてのお客様は、なんと、ボクの美容人生の初めてのお客様と同じ方だったのです。とても幸福を感じれる奇跡。

そんな話をしていると、赤いバラのお客様がこんな愛すべき奇跡を教えてくれました。

先日タクシーに乗って、降車時に「ありがとうございました。」と言った時の話。

「お客様、〜年前世田谷の方にお住まいじゃなかったですか?」

「はい、住んでおりました。」

「お客様の、その丁寧な『ありがとうございます』覚えております。お客様は、私のタクシー人生初めてのお客様だったんです。」

一気に皮膚が粟立ちました。

他方にとっては些細な日常の一辺だとしても、一方には何か人生を突き動かしてしまうような豪華なクルージングのような出来事だったりもするわけです。

今回のそれはもちろん、お客様の愛のこもった人とのコミュニケーションが生み出した奇跡の一つ。何事も丁寧に生きていれば、きっと関わっていけるのでしょう。

いつだって過ぎ去ろうとしている、見逃しがちな大事な時間。そういったものに日々の中で気付いていけることは、人生に多分に意味をもたらしてくれそうです。

実は、お客様の妹さんもお客様としていらしてくれていて、お家でボクの話題が出たそうです。

なんだか信じられなくなってしまうのです。

美容室という、ある種、外の社会から離れた特殊な空間に居るボクというものが、一歩外の世界に漏れだすように飛び出して、どこか遠い場所で、(一見一人歩きの)ボクが関わってしまえる時間というものの存在。それは、ボクの記憶や記録にまったく関係ないわけで。まるで奇跡。もうエンドルフィンやら、ドーパミンやらみたいなものが、こうドパァーっと出てしまうわけです。

少しでも、丁寧に関わっていければ、そういうものはまるで『ペイ・フォワード』のように細分化されながらも何かを築き上げていけるのかもしれません。

これまで多くのことをあきたり、あきらめたりしてきましたが、それもボクであって、きっと生きることに寸分のムダすら無いのだと、今日改めて感じさせていただいたのです。全くすばらしい可能性のある職です。

そんなことを今日はインタビューされました。

K様、本当にありがとうございます。

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