2013 06 04

青の南国の名

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陽が暮れて、どこか残る蒼白さもいよいよ暗闇に呑み込まれた頃、若い男の一啼き。これほど、夏を感じさせられるとは思いもよらなかった。わたしは室内の網戸越しに、幾分離れたどこかから一直線に飛び込んで来たそれを、ただ受け入れるように聴いた。若い男独特のその声は特に嫌みもなく、ただその場限りの刹那的享楽のようなものを感じさせられた。それが失われた夏の頃の何かを彷彿とさせたのかもしれない。外は穏やかで風の心地よい日だった。 不思議なものでその一啼き …

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