暴力的にボクが飼い犬を怪我さすとか、それを誰か別の人間のせいに陥れるとか(しかも巧みに)、その犬の傷を癒すためにアロエを探す旅に出て(と言っても、実家の近所)祖母と探していて、どうしても祖母を危険な道から逃せないもどかしさだとか、そして案の定、極寒の冬の海に祖母は落ちてしまい、近くの者がだれも助けにいかないもどかしさ(そしてまた、誰かのせいにしている)、結局ぼくが行って飛び込んだのだけど、水の中だからと覚悟していた重さよりも遥かに祖母が軽かったということ、思っていたより初めておぶった祖母が想像もできないほど人生ですり痩けて軽すぎるという事実に、ボクは大声で鳴いた、助け出すには寒さで震えすぎてとても細すぎる道、一方は塀で一方は崖、それを気遣った祖母が背から降りて自分で飛び越えた途切れた道、祖母は何でもないわよ私は大丈夫って示すために跳んだんだ(今度は泣く)、着地点に備えられていた落とし罠で(今となっては誰がそのようなものを作る必要があったのかさえわからない)祖母はつぎつぎに堕ちていく、幸いその先は砂地で思ったより深くないので、あとから追ったボクも大丈夫だった、それでも祖母は寒くて仕方がない、ぼくは四苦八苦手際して暖めようと努めた、外に助けを呼ぼうと這い出して、そこからはたくさんの人が見物していた、憤り、しかし世間体を気にするボク(例えば上司、取引先、画面越しの芸能人たちに愛想良く対応する)、もどかしさ、戻ってみると、祖母はうつ伏せにくっぷしていて、もうだめかと思った、抱きかかえた時の再び軽さ、顔面が漫画のように蒼白を携えていて、もうだめだと、強く一打ち鼓動が鳴る、祖母の声が漏れた、ボクは急いで服を脱がせ、ボクも脱ぎ、腹にはしわくちゃの乳房を感じながら、幸い乾いたボクの紺の厚手のコートで二人を包む、強く抱きしめる、そんなのは厭だと強く願い叫び、しかし押し黙って安心させて、それで顔色は戻り、また外の喧噪に愛想を振りまき、しかし背後の祖母に強く呪縛されながら戻れない自分に歯痒さを感じ、これでは先ほどの二の舞だ、そんなこともわからないのか、そして、もう一度祖母の顔を見ようとした時、現実では少し強めの地震が襲っていた。結局助け終えれなかった曖昧な結末と、現実の地震に、胸ははち切れんばかりに高鳴っていた。
これが、昨日の朝、ボクのみた悪夢の一遍。あまりに恐怖の部分だけが現実的で怖くて仕方なかった。
とにかくぼくは昨日悪夢を一時間置きぐらいにみてしまった。とてもリアリティそのものといっていいタイプの恐怖。端々は確かに超現実的なのだけど、その根本のところがどうにもたまらなく現実だった。
そういった恐怖というのは、どうも目に留まらないタイプの日常的暴力に似ていて、それは気をつけなくては自分の内にある最も恐ろしい一部なのかもしれない。
しかし、そのことに気付けたので、まず良かったと言えます。
でも怖かった。そして、夢で良かった。
包み隠さず書いてしまいましたので、気を悪くされた方がいらしゃいましたら申訳ありませんでした。
koko Mänty (kissa) 成重松樹