不動前ノススメ – #2 東印度カレー商会 -

何度でも言いたいが、カレーと、コーヒーと、ドーナツはとても重大なものだ。近所にお気に入りを持つと暮らしがぐっと成熟する。

それで今回もご紹介させていただきたいお店がある。不動前のカレー屋さん。『東印度カレー商会』。不動前駅すぐ側のお店で、テレヴィの或る番組でも取り上げられていた。

店内に入ると穏やかな物言いなのだが確かな力強さみたいなものを感じる声で、「いらっしゃいませ」と豊かな表情とともに店主が迎えてくれる。はっきり言わせてもらうが、おいしい。僕はまだ数度ほどお邪魔させていただいただけだが、“すぐに馴染んでくれるカレー”といった感じである。どのような味かということについては、ある程度感想として書けなくもないが、僕が言いたいのは、多分実際に食べてみるのが一番だと思う。いまや、口コミは飛行機よりも速くなった、光の速度である。確かに僕自身も何かを買うときあらゆるレビューを見るようになった。それで買わないことすらある。お給料でモノを買って手に入れる前から、自分の働いた対価と見合わないと決めつけてしまうことがあるのだ。もちろんそれが妥当な時もある。しかし、それで失敗するのも、本来のお金を使うということの一つだったはずだ。と、誰かが言っていた。最近、さらなるSNSの発達もあり、あらゆる情報がそこら中に漂っている。悪い時には、経験もしていないことをあたかも自分の知識として思い込んでしまうような事態すら起きてしまっているのが現状だ。とにかく何が言いたかったかというと、是非食べてみて欲しいということ。

「食べる」というのは「出会い」なんじゃないかと思う。こういう言い方は少し良くないのだが、決して世界一のカレーではないのかもしれない。でも、とても美味しいと僕は言える。それは、やはり店主と言う人物があるからなんだと思う。少しでもお客さんが気持ちいいように、気をかけ、工夫し、常に味、サービスの向上を志しているのが目に見える立ち振る舞いなのだ。多分それは出会ってみないと分からない。パリのドミニクおじさんは言っていた、「たとえ何かを抱えていても、笑顔で食べることが最低のマナー」。その人に会えば笑顔になれる。それがここの店主。マナーをチャラにしてくれるというわけだ。きっとここは世界一のカレー屋さんの一つに違いない。

先日出勤時にお店の前を通りかかると、「おはようございます。いってらっしゃい。」と健やかに言ってくれた。まだ数度しかあったこともない僕に臆面もなく。僕もあんな大人になりたいと思った。店主に会うといつも思う。よし!がんばるぞ!

koko Mänty (kissa)               成重 松樹

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